JUN
TOMITA
TEXTILE STUDIOKYOTO, JAPAN

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この夏の仕事のこと、、。

2015/09/03

あの暑い暑いと云っていた夏もいつのまにやらどこかへ行ったような今日この頃です。
田んぼの稲は頭を垂れてもうそろそろの稲刈りを待っています。
その上を赤とんぼがスイスイと飛んでいます。やはりもう秋が来ているようです。
30年ほどお付き合い、お世話になっている京都のT屋旅館に関わった仕事をこの夏二つすることになりました。
この旅館のご主人のTさんにはお会いするたびに美術工芸全般、特に建築のこと、庭、
焼物や食べ物などなどいろんな分野の美のことに関していろいろ教えていただくことがたくさんあり
お会いしに行くのがとても楽しみなお方です。
そのTさんはこと敷物に関しては鍋島緞通ほど日本の建物に似合うものはないとおっしゃっておられます。
そして旅館のそこここに敷いておられます。もちろん玄関にも。
お世話になり始めて間もないある日、T屋の玄関に鍋島に代わる「夏の敷物」をつくってくれとの課題をいただきました。
それまでに僕自身も敷物をつくってきていましたがそれはイギリス時代に開発したウール100% のもので
日本の建築のなかにはなかなか入りづらいものがあります。
旅館の玄関と云えばやはり一つの顔になるところなので変なものはつくれません。
まして鍋島緞通に置き換えれるものをと、、。
それからは毎日毎日考え、試行錯誤してはみたもののなかなかいいアイデアはでてきませんでした。
苦し紛れに佐賀県まで夜行列車に乗って鍋島緞通を見に博物館にも行き、
実際織られている工房へもお邪魔して見せていただきました。
勉強にはなりましたがそんなに簡単に問題が解決するようなものではありませんでした。

2年ほどの間に時々思い出してはどうしようと考えるのですがなかなか芳しいものがでてきませんでした。
そんなある日、何も一枚でつくらなくても二枚重ねもあり得るかもという案が思い浮かびました。
そのときたまたま興味を惹かれていた羅織り、紗織り的なものを別の布の上に被せるのはどうか?
透け感のある紗を布に被せることによって色を遊ぶことができる上に「夏の敷物」という課題にもいけるかもと喜び、
さっそくその案を提出しました。
答えは長い時間がかかったけれど面白いものが出来そうということでお許しがでました。
それからの実労働はからだを動かすだけなのでとっても楽な筈と思っていましたがやはりいくつかの障害がありました。
紗織りをするにあたっての勉強をし、その材料をどうするか。やはり敷物なので強度も要求されるし、
それでいて涼しげに見える透けた紗にするには、、、などなど。
いつも行く糸屋さんに相談しているうちに教えていただいた「琴糸」を見た時には狂喜乱舞しました。
琴の弦に使われる糸でしっかり撚りがかかった絹糸です。強度がありながらさらりとした手触りはまさに紗織りの敷物にぴったりでした。
出来上がったものにTさんもとても気に入って下さり、僕もようやくお役に立てて喜びました。
とても楽しかった仕事でしたが辛くもありTさんにもうに二度とこのような仕事はしたくありません
と云ってしまった程です。
しかしこの度もう一度あれに近い夏用の敷物をとおっしゃっていただき二代目の夏の敷物をつくらせていただきました。
今回のものは紗織りではなくざっくりした絹糸を使って組織織りの透け感のある布を織りました。
これにはパートナーの堀ノ内麻世のアイデアや試作づくりの協力のがあって初めてできた仕事でした。
出来上がりにTさんも僕も満足いくものになりました。

こうして考えてみると苦労して出来上がったものにはやはりそれなりの達成感と同時にいろんな副産物を残してくれます。仕事をしていくなかで時々こういう印象に残るものに出会えることに感謝します。

 

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もう一つの夏の仕事は、T屋旅館がやっておられるてんぷら屋をこの度旅館の近くに移転されるために新たに建てられたた建物の一室に100 X 200 cm のサイズのタピストリーを納めてきました。これは何年か前につくったものでしたがイメージとしてはぴったりと合うと勝手に判断してTさんにも見てもらい掛けてきました。9月の中頃にオープンするとのことなのでとても楽しみです。

 

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